2024年5月25日(土)~5月26日(日)に北海道札幌市の北海道大学札幌キャンパスで開催された第69回土木計画学研究発表会・春大会に参加しました.西堀准教授が参加し,研究に関する情報収集や論文発表を行いました.
発表した論文は,「高齢運転者の交通安全対策に対する意識と普及促進策の試行 ~行動経済学の知見を用いて~」というタイトルです.論文の概要は記事の下部に記載します.
この発表では,高齢運転者の交通安全をさらに高めるため,安全運転サポート車(サポカー)※1の普及を促進することを目指して,どのような情報提供を行えばサポカーへの乗換意向が高まるのかを検証しました.その結果,何も情報提供をしなかった群(制御群)と比べて,情報提供の工夫を行った群(プロスペクト理論※2・バンドワゴン効果※3)の方が乗換意向を持ちやすいことを確認しました(図1).こうした結果を踏まえてより効果的な情報提供方法を検討していく予定です.
図1 情報提供の工夫による乗換意向の変化
※1 サポカー:衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)や踏み間違い時加速抑制装置の
先進安全装置を搭載した自動車
※2 プロスペクト理論:人が不確実な意思決定を行う際に損失を回避する傾向がある
という考え方
※3 バンドワゴン効果:多数の人の発言や態度によって人の判断が変わる特性
また,会場の北海道大学は広大な敷地に建物が点在しています.校内の道路はどこまでも続くかのような並木道であり,そこから一歩入ると歴史を感じる建物があったり,敷地内に川が流れていたり,とても心が落ち着く環境です.札幌駅から徒歩圏にあるとは思えない異世界に迷い込んだ気分になります.
写真1 北海道大学総合博物館の玄関
写真2 キャンパス内を流れる川
発表論文の概要
高齢運転者対策の一環として安全運転サポート車(サポカー)の普及促進などの交通安全対策が実施されている.今後さらに高齢運転者の増加が見込まれる中,安全な交通社会の実現に向け,本人の自主性に委ねられるサポカーの普及をより効果的に行うための方策が求められる.本稿では,高齢運転者を含む高齢者1万人を対象とした大規模調査の結果を用いて高齢運転者の交通安全対策に対する意識等を把握するとともに,日常的運転者約1600人を対象に行動経済学の知見を用いた普及促進策を試行した.その結果,高齢運転者のサポカーの認知度は約6割で運転免許自主返納より低いこと,サポカーを利用している人は高齢運転者全体の約2割であること,行動経済学の知見を用いた普及促進策により,サポカーへの乗換意向を持ちやすくなる効果があることを確認した.
Key Words: elderly driver, advanced safety vehicles (ASV), voluntary measures, Dissemination promotion measures, behavioral economics
English Title: ELDERLY DRIVER’S ATTITUDES TOWARD TRAFFIC SAFETY MEASURES AND TRIAL OF DISSEMINATION PROMOTION MEASURES - USING THE THEORY OF BEHAVIORAL ECONOMICS -
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